設計時における暖房必要エネルギー量の試算

2024-25冬に暖房に使った消費電力量が設計時の目論見に対してどうだったのか検証したいと思います。結論としては設計時の目論見と実際の消費電力はだいたい一致していました。その説明はかなり技術的な話になってしまいますが以下に記します。

暖房必要エネルギー量の設計試算には北海道発行の「北方型住宅技術解説書平成22年版」資料4に記載のデグリデー法を用いました。なぜか令和3年度版の技術解説書からは消えていますが気にしないことにします。まず熱性能の設計値を下記します。

<熱性能>

  • 気積 137.74㎡(=家全体の内部容積)
  • 外皮面積 174.78㎡(=屋外や地盤など外部と接する表面積)
  • 外皮平均熱貫流率UA 0.261W/㎡・K
  • 外皮熱損失量 45.59W/K(=屋根・外壁・窓・ドア・床・基礎から外部に伝わる熱)
  • 換気熱損失量 24.10W/K(=空気の入れ替えによって外部に出ていく熱)
  • 合計熱損失量 69.69W/K(=外皮熱損失量+換気熱損失量)
  • 日射取得熱 217W(=窓から得られる日射熱)
  • 室内発生熱 213W(=人体・電気機器・燃焼機器等の生活排熱)

外皮熱損失量は各部位(屋根・外壁・窓・ドア・床・基礎)ごとに熱貫流率(=断熱性能)×面積で熱損失量を計算し合計したものです。この外皮熱損失量を外皮面積で割ったのが外皮平均熱貫流率UAであり建物の省エネ等級を判定する数値となります。

換気熱損失量は1時間あたり必要換気量(気積×0.5)と空気の比熱から求めています。

外皮と換気の熱損失量を足した合計熱損失量に内外温度差を掛けると、建物から外部に逃げていく熱量が求まります。

日射取得熱は技術解説書記載の冬季南面相当窓面積1㎡あたりの透過日射取得熱量の表を用いて計算しています。道内の都市ごとの数値が載っていて小樽の場合Low-Eペアガラスで35W/㎡となっています。冬季は北側の窓には日射が無いのでこの家では南東向きと南西向きの窓(合計7.3㎡)が対象となります。真南向きよりやや日射が減るので係数0.85を掛けて、35×7.3×0.85=217Wという計算です。

室内発生熱は技術解説書記載の4.6W/㎡を延べ床面積に掛ける方法で算出しました。

日射取得熱+室内発生熱=室内取得熱430Wは暖房を使わなくても室温を上昇させます。内外温度差による熱損失とのバランスから430/69.69=6.17℃が上昇温度となり、これは「自然温度差」と呼ばれます。

次に暖房に必要な熱量を計算します。それには暖房度日数(デグリデー)という数値を用います。これは日平均暖房設定室温と日平均外気温の差、つまり内外温度差を冬シーズンのあいだ積算したものです。ただし先ほどの自然温度差があるので、暖房によって暖めなくてはいけないのは設定室温から自然温度差を引いた温度ということになります。この家の設定温度は18~20℃狙いでしたが温度計の問題で低めだった可能性があるので18℃として、18℃-6.17℃=11.83℃が暖房の熱で暖める温度ということになります。技術解説書記載の暖房度日数の数値表を直線補完して11.83℃のときの小樽の暖房度日数を求めると2072(K日)です。熱損失とのバランスから暖房に必要な熱量Qが以下の式で計算できます。

Q=24(h/日)×暖房度日数2072(K日)×熱損失量69.69(W/K)/1000=3,466kWh

この熱量を生み出すためのヒートポンプの消費電力量を求めるためにはエネルギー消費効率COP(=暖房能力/消費電力)という数値が必要になります。メーカーのカタログを見ると設置した製品の暖房時定格COPは4.05です。しかしながらその試験条件は外気温度7℃、水使用です。小樽の真冬の平均気温は-3℃前後ですし循環水は不凍液を使っていますのでCOPは大きく変わってしまいます。残念ながらこの条件でのCOPは不明なので推定するしかありません。最大加熱能力特性のグラフはカタログに載っているのでこれを読み取ると温水50℃で外気温7℃での暖房能力6.4kW、-3℃では4.8kWなので能力が0.75倍に落ちます。やや乱暴な方法ですが能力に比例してCOPも0.75倍になると仮定し、不凍液を使うと水の時に比べて能力が-6%、消費電力が+3%になるとカタログに書いてあるので、小樽の冬におけるCOPを(4.05×0.94)/(1×1.03)×0.75=2.77と推定しました。

よってヒートポンプ温水暖房システムの消費電力量は、必要な熱量QとCOPより

3,466/2.77= 1,251kWh と設計試算しました。

これに対し2024-25シーズンに暖房に使った実際の消費電力量は

12月400kWh(請求書の電力量から推定)、1月296kWh、2月297kWh、3月287kWh、4月50kWh

合計1,330kWhです。

まずまず設計時の目論見通りでしたが、今シーズンはデータ不足や試行錯誤の繰り返しがありましたし室内温度計の精度問題もありました。次の2025-26冬に再検証します。